だい よん わ。











『禁止エリアに入ったらこのリングが作動して、首がばぁん!っと吹っ飛んじゃいまーす☆』

『教室を出るときに、武器と食料を渡します。
 武器は当たりとはずれがあります。
 もしハズレても泣かないで、お友達を殺して奪っちゃえ〜☆』

『期間は今日の夜から明日、明後日、明々後日の日没後までの3日間です。
 期間内に最後の一人が決まらなかったら、みんなの首輪が爆発するから気をつけてね?
 お姉さん泣いちゃうよー』



『じゃあ泣けよ』
















 ビデオは、教育のお姉さんが子供に説明するような口調で、おぞましい事を可愛らしく喋っていた。


 禁止エリアに入ったら死。

 日に放送は三回。内容は死亡者と禁止エリアの発表。

 海からの逃亡も死。首輪のセンサーが反応する為。

 期間は3日間。生存者が一人以上の場合全員が死亡。

 武器はランダム。食料は支給。各自荷物は持って行ってよし。


 必要な内容は、そんな感じだった。

 俺は前から渡されたプリントの束の残りを蓮二に渡した。

 蓮二は黙ってそれを受け取った。



「柳」



 俺の声に、蓮二がプリントを後ろに渡しながら振り向いた。

 珍しく強い視線で俺を見て、何も言ってないが軽く頷いてきた。

 俺も頷き返す。



"港"



 プリントを渡すときに示した意味をわかったようだった。

 柳の頭脳は頼れる。

 なんとしても、この馬鹿げたゲームを止めさせ、仲間全員で生還を果たさなければいけない。

 それが部長として俺がここでできる唯一のことだ。


 誰も殺さない。誰にも殺しをさせない。


 みんな、疑うな、信じろ。



 俺は信じてる。















『じゃあ、お話することが終わってきたので、ちょこーっと前回の風景を流しちゃおうかな〜?』















 テレビがそう言った時、がぴょんっとロッカーの上から降りてきた。

 どうしたのだろうと僕が見ると、カバンからウォークマンを取り出して聞き始めた。


 顔は楽しげなのに、左手がぎゅっと握られてカタカタと少しふるえていた。


 僕は、彼女の手に自分の手をそっと重ねた。

 そのとき、彼女はここへ来て初めて俯いた。俯いたまま僕を見た。



 底が見えない井戸のような暗い目をしていた。




















 映像が流れ始めた。

 教室、悲鳴、抗議の声を上げ、酒田に撃たれた男子生徒。

 それを助けようと近寄った女生徒。

 と、首輪が鳴り出した。戸惑う彼女に酒田が首輪の説明をする。

 周りがざわめき、誰もが彼女を避ける中一人飛び出して彼女を助けようとする女生徒が居た。

 だ。

 しかし、どうやっても無理で、女生徒はの目の前で爆発。は全身赤く染まる。

 女生徒が死んだ直後に、別の男子生徒の首輪が鳴り出す。



「あー、今回はペア制はなしだから飛ばすぞ」



 早送り中に、男子生徒はパニックの中、血飛沫を上げて絶命して行った。

 一人一人がカバンを持って出ていく姿も早送りで流され、しばらくすると画面が変わり、舞台は校庭になった。


 酒田が再生に戻す。



『優勝者は〜』



 画面の向こうが笑って言う。

 林の中から血まみれのが出てくる。クスクス笑っているのが見て取れた。

 が、ふと真顔に戻り、カメラの方を向き銃を発射した。

 バスンっと言う鈍い音と同時に画面が砂嵐になった。

























 ビデオが終わると全員がを見ていた。

 見ないわけがない。


 前回優勝者。


 その言葉が示す意味がわからない者はここにはいない。

 当人はニコニコと音楽を聞いており、視線に気づいていない訳でもないのに特になにもしなかった。

 横にいる不二にもあまり変化はなかった。

 前回優勝と聞いても、別に離れる様子を見せない。


 と、不二と目があった。

 不二は不思議そうに俺を見返した。



"乾、君のデータに、はどう書いてあるの?"



 そう言ってる目だった。

 俺は視線をはずした。



 俺のデータでは、がこのゲーム脱出の鍵となるはずだ。



 俺の知ってるが、前回優勝者なら…。


























『一番、聖ルドルフ学院、赤澤吉朗くん』

「…はい」



 そして、誰の抗議も聞くことなく、悪夢の幕が上がった。



























[残り 44名]




 五章へ

 三章へ




 戻る