『ダンダンダーン!壇太一!』
『運動会みたいな活気ある発砲音だね』
『そうさ。これからゴールへの徒競走が始まるのさ』
ドサッと、人が地面に倒れる音がした。
俺は、みた。
酒田が小さく注意をした時に、が動いた。
キレて叫んで銃を取り出すわずかな隙に、床を蹴り一直線に神尾アキラの後ろに立ち、足払いを掛けた。
そして、神尾は床に倒れ、神尾の代わりにがその場に立っていた。
「せんせぇ、ゲームは熱くなった方が負けですよ??」
俺の位置からは表情はみえない。
甘えるような声で、が言った。
左手をダランと下げていて、制服の肩の部分にポツリと穴が空いていた。
その穴を中心に、じわりじわりと、赤が制服の色を浸食していく。
撃ちやがった。
撃たれやがった。
血の臭いがした。
俺の頭に血が登った瞬間、誰かが叫んだ。
叫びは連鎖反応を起こし、パニックを呼ぶ。兵士につかみかかったり、暴れたりして、みんななんとか教室から出ようとした。
俺は、樺地に宍戸を押さえさせ、長太郎を抑えた。
忍足は冷静にじっと酒田を見ていて、感情的になりそうな岳人は不思議と耐えて静かにしていた。忍足が何か言ったのだろう。
ぎり、っと音がして奥歯を噛み締めていることに気づいた。
今は、まだ、あの男に従わねばならないと気づいたことが、腹立たしい。
「構え!発射!」
ダララララ!!
兵士の掛け声に合わせて、天井に一斉の威嚇射撃が行われ、パニックは恐怖の名の下に鎮圧された。
そんな中は周囲を気にもせずにスタスタと僕の隣に戻ってきて、ロッカーの上に座った。
そして、タイを解いて肩の止血をしだした。
以前彼女は、怪我をした僕たちに的確な治療を施してくれたことがあり、彼女は「以前ボーイスカウトやってたのよ」とうそぶいた。
英二に「ガールの間違いだろ〜」とツッコまれてウインクした笑顔が懐かしい。
怪我の様子はどうだとか、手当てを手伝いたいが、酒田の視線がきつくてなにもできない。
「〜?なんのつもりだ?」
「?何がですか??」
「先生の邪魔をするとは何事かと聞いているんだ!!」
ずっとに対して友好敵だった酒田がキレながら彼女に銃を向けた。
は銃口をみながら、全く考える時間も持たずに、
「だって私が殺す獲物が減っちゃうじゃないですか」
少しふてくされたように答えた。
その姿はまるで、自分の団子の方が小さかったから取り替えた、と告白する子供のようなもので、しかし内容の異常さに僕らは唖然とした。
殺 す 獲 物 が 減 る ?
酒田はその回答に大変満足したようだ。
一気に相好を般若から翁に崩す。
対して俺たちは、自分たちの仲間から出た「殺す」宣言に呆然としてる。
背中を冷たいものが走った。
…?まさか…?
……!違う違う!は仲間にゃ!何か分けがあって言ってるに決まってる!本気で思ってるわけがない!
だって、の横にいる不二は、表情を変えなかった。
ずっと酒田の方を見ていた。
さっきの言葉に一番同様するのは不二だよ。
だって、不二はの事が好きなんだから。
不二はを信じてる。
横の大石を見ると、微かに頷いた。
俺も頷き返す。
も青学のみんなも、他校のみんなも、仲間だと信じてる。
殺し合いなんて絶対ににしたくないって、信じてる。
「だから、リングの検証実験も嫌いなんですー」
「おいおい、実験しなきゃ悲惨さが伝わらないだろ?」
リングの検証実験…?
言われて首にあるリングに触れた。
辺りでチャリチャリと音がなるので、みんな考えることは似たようなものだ。
「わかんない人は禁止エリアで死ぬだけですよ〜」
おねだりするようなを見て、酒田はニヤニヤと笑った。
「しょうがないな〜、じゃあビデオ説明に入るぞぉ〜?」
「はーい」
嬉しそうに答える以外、誰も事態の成り行きに呆然とするだけでなにも言わなかった。
禁止エリア…?
死ぬ…?
飛び交っていく異常な単語に、実感の湧かない現実への恐怖が募っていく。
死 ぬ … ?
酒田がビデオを入れた。
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