『突然ですが、これからみんなに殺し合いをしてもらいまーす』
『ああ、まったく突然すぎるよ。びっくりだよ』
『悲劇と恐怖とラブストーリーは突然やってきて何ぼだとおもいまーす』
「どういうことですか?」
青春学園の手塚国光くんが、皆を代表するかの如く、酒田に質問した。
その瞬間、酒田の眉がぴくりと動いた。
あれは、プライドが高い者が不快だと感じたときにする動き、ですね。
手塚くん。君は地雷を踏もうとしてますよ?わかっていますか?
「部長」
くんが、声を発した。
手塚くんが彼女を振り返る。
彼女は手塚くんに、にっこりと笑ったあと、内緒話をするような仕草で、
「先生に意見するときは、質問してもいいですかー?って聞かないとだめですよ?」
小さい子に言い聞かせるように言った。
手塚くんは、しばらく彼女を見たあと、先生の方を向き、
「質問してもいいでしょうか?」
「・・・まぁ、いいだろう」
「俺たちは合宿に来たはずなんですけど」
「そうなんだけどなー、幸運なことに、お前らは新BR法の初体験者に選ばれたんだ。だから合宿はなし!光栄だろ?」
「新BR法・・・ですか?」
「そうだ。・・・もしかして知らなかったのか?
なんだそうか。じゃあ、ええとー・・・手塚くんはいい質問してくれたんだな。みんな拍手〜」
酒田が囃す声に反応するのは、もちろんくんだけだった。
「今まで中学三年だけが選ばれてたんだがな。どうも一クラスだけだと、皆やる気がなくて困るんだ。
そこで、だ。一クラス分の人数が集まるなら、どういう集団でもいいんじゃないか?という話になってね。
ああ、もちろん、中学生ね。それは。
そこで、厳選なる抽選の結果、関東地区選抜合宿の君たちが選ばれたわけなんだよ」
酒田の言葉に、誰もが絶望を感じだだろう。
なんて腐った世の中だ。
どういう集団でもいいんじゃないか?ですって?
「・・・・ふざけんなよ」
「うん?」
声を荒げて立ち上がったのは、確か、不動峰中の神尾アキラさん、でした。
「まてまて、ええと、君は、そうそう神尾アキラくんだったね。」
「俺の名前なんかどうでもいいんだよ!」
「アキラ!」
「どうでもいい」と神尾さんに言われた瞬間に、酒田の口の端がピクリと引き攣ったのを見たでした。
神尾さんを止めた声は、橘さんです。橘さんは、酒田に逆らうのがどういう結果になるかどうかわかってそうでした。
青春学園のさんが、手塚さんにふざけた調子で忠告したのと、多分同じ意味を持つんだろうと思いましたでした。
僕は、憤りより何より、今の事態への恐怖が勝っていて、阿久津先輩のユニフォームをぎゅっと握って座っているのが精一杯でした。
阿久津先輩も、珍しく、そんな僕に何もいいませんでした。
「止めんなよ橘さん!・・・・俺たちは殺し合いなんかしねぇんだ!!」
「座れ、アキラ!」
橘さんの制止も空しく、神尾さんが語尾を強く言った途端に、みんなが口々に思っていることを口にし始めたのでした。
「そうだ!誰が殺し合いなんてするか!」
「ふざけてんじゃねぇよ!!」
「合宿所に戻せ!!」
「おい、うるさいぞー。静かにしろー。先生の話はまだ終わって」
「皆が言いなりになると思ってるなよ!!」
「やめろ!みんな!」
「お前らのゲームに付き合ってる暇なんてないんだよ!!」
「馬鹿にするのも大概に」
「ぎゃあぎゃあぎゃあぎゃあうるせぇぞゴラ餓鬼ども!!!!!!人の話を最後まで黙ってきかねぇから死ななきゃなんねぇってことがわかんねんだぞバカチンがぁあああ!!!」
酒田は一際大きな声をあげ、黒いものを何処からともなく取り出しました。
薄暗い教室の蛍光灯に照らされて、鈍い色をしているそれが銃だとわかったのは、耳を劈く発砲音がしてからでした。
銃の先端が示しているのは、最初に反抗した神尾さんでした。
ダァン!!
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