ま く ま 。










「なんで、お前さんとわししかおらんのかのぅ」

「さあ…何故でしょうか」



 仁王と柳生は、暗い部屋に閉じ込められていた。

 入れられる時に見た扉の分厚さ、叫んでも廊下に声が響くことは無いように思えた。



 仁王は学校に向かう途中、道端で老婆を助けている柳生に会った。

 足を挫いたらしい婦人を柳生が背負い、荷物を仁王が持った。


 遅刻する旨を真田にメールし、婦人を送ってから個人で合宿所に向かった。



 幸か不幸か、二人は他の仲間とは違う道を歩むことが、このとき決定した。



 二人が着いた合宿所はガランとしており、賑々しい各学校のジャージも選抜メンバーたちのざわめきも聞こえない。




 どうしたことだ?




 場所を間違えたかと困惑する二人の前に、軍服を着た男たちが走ってきた。


 尋常でないその様子にぎょっとしたが、二人は示し合わせたように黙って連行された。



 今反抗するのは得策ではない。



 二人ともそう瞬時に感じていた。



 反抗すれば殺されていただろう。



 そこまで感じれたかは分からないが、二人の判断は正しかった。





「他の方達も、こうして閉じ込められているのでしょうか」


「さあな…わからん…。

 まあ、柳と真田がおったら、まず、まずいことにはならんじゃろうて」





 気休めのように仁王が呟く。


 切れやすい後輩や危なげな同輩を思うと、心配事は尽きない。

 柳も真田ほど堅物ではないが、頭が切れる分、余計なことを考えてそうだ。

 願わくば、俺のメールが届くまで学校に留まっていてくれれば…。


 淡い期待を載せた携帯は、送信ボタンを押した瞬間取り上げられた。

 柳生のもだ。

 現状を仲間に連絡し、警告する術を二人は持たない。


 もっとも、仲間たちがすでに生き地獄をさまよっていることを二人は知らない。

 想像も出来ない。

 まさか、そこまでの非現実が彼らを迎えようとしていたなど、考えつく筈がなかった。









 こん、こん、、









「!」




 沈黙が包む室内に、運命を決める鐘の様なノックが響いた。






























[残り 37名]




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