幕間






















 ばたばたばた・・・



 ・・・・足音?



 ごんごんごん・・・



 ・・・・なんの音?



 ばしっばしっばしっ



 いたっ痛っ痛いっ





「おいっ」





 いーたーいー・・・誰だ〜・・・




 私は重い瞼を上げた。

 サァ、と目に光が入る。

 眩し・・・。ああ、いい天気。陸遜が帰って来なかった日に似てる。晴天。

 視点を近くに戻す。目の前に居て、私をぶったたいてるのは、つんつん頭の青年。

 逆光になっていて、その人の表情はわからない。

 バンダナをして、赤い羽根をバンダナにさして、上半身はほぼ裸。やだ、卑猥だわぁ。

 彼が動くと、腰の鈴が、ちりんと鳴った。

 鈴・・・?



「お、起きたかっ。りくそーん。りーくそーんっ」



 遠くから、声に応じて誰かが駆けてくる。

 軽やかな音。たったったった。

 音の方向は分かるが、そっちを向くことができない。

 耳が機能してるだけでもめっけものかな?



「一度呼ばれればわかりますよ。・・・なんですか?」

「負傷者一名発見シマシター」



 『りくそーん』と呼ばれた奴はため息を突きながら問い、つんつん頭はなんだか不貞腐れた言い方で、『りくそーん』と呼んだ奴に答える。

 『りくそーん』?うわぁ、なんだかいいなぁ。どんな人?

 相変わらず体は動かないが、心は酷くわくわくしている。

 それにここは何処なのかな〜。ごつごつした感触は地面?それとも私は死んだのかな?

 ああ、だったらこの『りくそーん』は、もしかしたら、陸遜で、お迎えなのかしらん?

 だったらいいな。それくらい許してよ、神様。



「はくげん・・・」



 私は思わず呟いた。あ、ちゃんと声になってる。

 青年が驚いたように私を見た。



「おい、陸遜。お前のダチか?お前の名前呼んでるぞ?」

「私の友人は皆死んでますよ。・・・・・・・・・・・・・・・え?」



 『りくそん』は、私の顔を見て停止した。

 その気配を感じて、私は何とか顔の向きを変える。

 私は、『りくそん』の顔を見た。

 多少血で汚れている、少年のような顔立ち。赤い服。ああ、赤い服似合うなぁ。




 陸遜だ。




 私は頬が緩むのを感じた。




「はくげんだ・・・」




 ああ、うん。いいや。もう死んでも。

 ありがと神様。幻でもいいよ。本物の伯言じゃなくても。全然いいよ。

 一言、言いたかったんだ。



「助けに行けなくて・・・ごめんね・・・伯言・・・」



 つまんない劣等感に囚われずに、今みたいに参戦してたら、きっと・・・・

 言うこと言ったら、なんだか、すっきりした。

 ああ、空が青いな。風が速いな。すごい、世界は綺麗なんだな。

 何だかすごく安心した気持ちになって、私の意識はまた何処かへ行ってしまった。