テスト自体は嫌いではない。
なーんて言ったら、どんだけ頭いいんだよお前、って話になるが、私の頭は中の中だ。平均点くらいだ。
小学校の時には、成績が張り出さされるとかなく、先生が百点の子の名前を呼ぶだけで、順位を計る手段と言えば、通信簿だけだった。
3と4のパレードの中、体育と音楽が5。
あ、ちなみに5段階評価よ?
私の親は、数字の成績よりその隣の生活態度の丸の多さを気にする人たちなので、無駄に人に気を回す打算的な小心人間に育ってしまった。
良く書かれるので、クラス委員やったりしていた。
テストのことで誉めてもらった記憶はあまりなく、怒られたこともないので、テストの時は授業がなくてうれしかったと思う。
しかし!今度は小学生とは違う。
張り出されるのだ。名前が。
すごい!漫画みたい!
こりゃあ頑張らないとね!
「桜乃ちゃん…勉強してる…??」
女子テニス部部室でジャージに着替えながら私は聞いた。
私の問いに、桜乃ちゃんは困ったように笑い、
「してるけど、頭に全然入ってないの…」
「そうだね…と言うかテスト内容どうなるんだろう…小学生の時習ったこと全部だなんて…」
思わずため息。
「そういえば、ちゃんなんでジャージに着替えてるの?」
…………は!
「あ、つい癖で…。今日はテスト勉強しないとまずいよね…」
「うん…」
私たちは同時にため息を吐いた。
テストやる前にテストが嫌いになってきた。
私の生活週間を返せ!
私たちが女子部室を出ると、待ってくれているはずのともちゃんがいない。
あれー?今日は部活が早く終わるから待っててくれるとか言ってたのに??
「あ、ちゃん、ともちゃんいたよ」
桜乃ちゃんの示す方に顔を向けると、越前くんに絡んでいるともちゃんが居た。
ともちゃん本当に越前くん好きね。
「ともちゃーん」
「いいとこなのに邪魔しないでよ!」
うを。
「怒られちゃったよ桜乃ちゃん」
「…ともちゃん…」
「いいや、近くに行こう」
私は桜乃ちゃんの手を引いて、二人の近くに行った。
「越前くんお疲れ様」
「、勉強してる?」
「は、はい?」
急に話を振られなにがなにやら。してないに等しいけど、してないとは言いづらい小心者。
「い、一応は」
「ふぅん、だってさ小田坂。に教えてもらいなよ」
「は、はい?」
ともちゃんが私を睨んでる。
睨む気持ちはわかるけど、睨まれても困るよ。
しょうがない!私が越前くんを引き止めてみよう!
「私頭悪いから絶対越前くんに教わった方がいいに決まってるって!」
「なにそれ?人に押しつけないでくれる?」
「先に押しつけたのは越前くんじゃんもー!」
越前くんの王子さまっぷりに私が頭を抱えると、自転車の止まる音がした。
「おーい、越前!…お、に竜崎も。なにやってんだ?」
桃城先輩だ。
その声を聞いて、越前くんがニヤリと笑う。
「桃先輩、ナイス」
呟きながら桃城先輩のチャリに乗ろうと走って行った。
!コイツ逃げる気だ!
「ちょっ、待って!越前くん!桃城先輩も待ってください待ってー!」
「桃先輩早く出して、に食われるっスよ」
「食うわけないじゃんばかー!」
むしろ私がともちゃんに料理される!!
桃城先輩は状況が読めずに困り顔だ。
「何がなんなんだ、おい」
「越前くんがともちゃんに勉強を教えると言って逃げるんですよ!」
なんか違う。まあいいや。
「言ってないよそんな事。がやるんだろ?」
「私より頭いいでしょ越前くん!周りはアルファベットを習ってる中、英語ペラペラな癖に!」
「今回の学力調査テストに英語は関係ないよ。聞いてなかったの?」
「聞いてたよ!」
「テスト内容は、多分が編入試験で受けたのと一緒だよ」
最後のは越前くんじゃない。
声に振り返ると、手塚部長と不二先輩が居た。「お疲れ」とお二人が私たちに言っている。
私は慌てて頭を下げた。
横で桜乃ちゃんも頭を下げた。
「「お疲れ様です!」」
「お疲れ様っス、じゃあ、また明日」
「はい……って、え!?」
言葉に反射的に頷くと、チリンチリンと可愛らしい音とペダルを漕ぐ音が聞こえた。
「ぎゃー!?」
顔を上げると、桃城先輩と二人乗りした越前くんが、豆になっていた。
桃城先輩の裏切り者ー!!
越前くんのばかー!!
「と、ともちゃん…ごめん許して申し訳ありません許して……」
あまりの脱力感も重なって、私はともちゃんに土下座した。
ともちゃんはそれでもご立腹のようで、
「いいけど、あとでケーキおごりなさいよ」
「ケ…!」
私お小遣い月500円なのに!せめて肉まんにして!
…と、言いたいが言い返せない臆病者は、ともちゃんの視線に圧倒されて、ただコクコクと頷いた。
桜乃ちゃんは、オロオロと心配そうにしている。
桜乃ちゃんも、越前くんに勉強を教わりたかったに違いない。
さっきだって不安そうにしてたし、ともちゃんみたいに激しくないが、越前くんが好きなんだろうし。
そんな様子に不二先輩がクスっと笑った。
「あんなに必死に越前に頼んでどうしたの?明後日のテスト不安?」
不二先輩の台詞に、私と桜乃ちゃんは顔を見合わせて苦笑いをした。
「不安と言いますかなんと言っていいのか…」
チラッとともちゃんを見ながら言葉を濁すと、意味を察した不二先輩が楽しそうに笑った。
不二先輩、わかっててあえて聞きましたね?
「」
「は、はい!すみません!」
突然手塚部長に呼ばれて、反射的に謝ると、なぜか不二先輩が笑った。手塚部長は微動だにしない。
「学生の本分は勉学。よって成績不信者は、レギュラーになれない。そう思え」
「!!」
つまり筋肉馬鹿は要らないってことっスか?
「べ、べべべ勉強します!!」
「よし」
「まあ、学力調査テストはそんなに大変じゃないと思うよ。頑張ってね、、竜崎。と、小田坂さん」
ともちゃんにも励ましの言葉を掛けると、先輩二人は「では」「じゃあね」と言って帰って行った。
「桜乃ちゃん、ともちゃん、一緒に勉強しない…?」
「う、うん」
「リョーマ様いないけど、しょうがないわね」
私があまりにも呆然と物を言ったので、二人は同情したように頷いた。
結果。
赤点はなかったが、50位以内でもなかったので、廊下に私の名前が張り出されることはなかった。
テニス部のレギュラー陣や越前くんの名前はチラホラ見かけた。
ショッキング!!
手塚部長に怯えながら、その日の部活を過ごした。
「」
「はいぃぃ!!すみません!!」
・おわり・
あとがき
不二先輩ー・・・。
勉強教えてくれたって、いいじゃないですか。頭良い癖に。
不二「あれ?でも、は、編入試験合格したばかりだよね?」
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