「嘘」という名の「真実」

















 「嘘」など付いたことがない。

 ただ「本当」ばかりではないだけじゃ。


 わしは病気なんじゃ。

 それはわかっとう。


 『本当』ばかりでは息苦しいぜよ。

 誰が?そりゃわしが。

 誰のせいでもない。わしの病気じゃ。




 二年になって、初めて『先輩』と言う枠を押し付けられて、面倒やのうと思っていた頃、目に付いた一年は赤也とじゃった。

 猪突猛進で先輩にも同輩にも遠慮ない赤也と、別な意味で先輩も同輩もない

 は特に、マネージャーに厳しい(原則募集してないらしい)うちのテニス部に、一年から入れたと言うことが興味をひいた。

 参謀と幼なじみなだけあって、テニスについて詳しく、言われなくても仕事ができる優秀なマネージャー。ただし、わしと同じような病気にかかっとる。

 しかも見たところわしより重症じゃった。自覚もない上に、往々に悪意の固まりを振り撒いとった。

 自分のことに一切触れさせない、機械みたいなやつじゃった。



 じゃから、わしはアイツに興味をもった。腹のさぐり合い、騙くらかして相手の化けの皮を剥いでやろうとちょっかいを出した。

 そんなわしの思惑に気づいてか、わしの誘いにはトコトン冷たかった。笑えるくらいにな。




 は、二年になって随分マシになった。

 わしも自分で言うのもなんだが、三年になって随分マシになったと思っとる。



 ただ、この一年で、の数ある嘘の中に潜んだ『真実』が、テニスへの渇望以外見いだせんかったのが、まるで挑戦状のようにチリチリと腹の奥を焼いとうて、気分がわるい。






 救ってやりたいとかそんなんじゃなかと。

 ただ、アイツはわしの騙しに織り交ぜた本当を、掬いあげるのが上手い。

 そればかりでは、腹立たしいだけじゃから。