魔王様がみてる











*注 題名からお気づきかも知れませんが「みなみけ」のパロディーです。
カナ=貴方、チアキ=リョーマ、藤岡=不二、です。この漫画を薦めてきた友人に「藤岡が不二先輩に見えてしょうがない」と言われたので想像してみたものです。夢主はR&Dの彼女ではありません。






 階段から足を踏み外すし、がくっという衝撃で、私はハッと夢から覚めた。
 な、なんだ夢か。びっくりした。
 どうやら机につっぷして眠ってしまっていたようだ。首が痛い。


「あれ・・・いつの間に寝てたんだ・・・・?」


 いざ授業!と意気込んだまでは覚えている。
 さわっと窓から風が吹き、窓の方を向くと、窓に寄りかかって不二が立っていた。
 私が見ているのに気付いて、こちらに穏和な顔を向ける。


「起きた?」


!?
 私は机から飛びのき戦闘態勢に入る。


「き、きさま!不二!」
「え」
「寝込みを襲うとは卑怯だぞ!」
「え?」
「正々堂々と勝負しろ!」


 不二は慌てて両手を振って否定する。


「ご、誤解だよ!次の時間音楽に変更になったのに、君が寝ているから。起こそうと思ったんだけどあんまり気持ちよさそうなんで」


 音楽?
 私は戦闘態勢を解除しないまま、不二が指す黒板を見ると、確かに「次の時間 音楽室」と書かれている。まわりを見渡せば、誰もいない。


「あやしいものだな。まあいいけど」
「あ!」


 さっさとしたくして離れようとする私に、不二が声を掛けてきた。
 顔を向けると、不二は顔をやや伏せて真剣な顔で、


「その、この前は、上手く言えなかったけど・・・僕・・・君が・・・すごく好きだから」













 IN 越前家。
 私の親がこの越前家の家長=越前南次郎と従兄弟どうしで、その伝手で私はよくテニスを教えてもらっていたのだけれど、息子のリョーマくんが青春学園に通う為にこちらに来てからは、おじさんよりリョーマくんと打ち合う方が多くなった。
 勝手知ったるなんとやら。リョーマくんより私の方がこの家のことに詳しいんじゃ無かろうか。



「リョーマ様!リョーマ様はお帰りか!」


 今のドアを開けると、カルピンと戯れているリョーマくんがこちらを見ていた。


「なんじゃ、騒々しい」
「ああ、いた!ちょっと相談したいんだけど」


 私はリョーマくんの横に正座する。緊張感なくカルピンが「ホァラ」と鳴いた。


「今日!学校で!魔王に「凄い好きだ」って言われた」
「ふーん」
「前のコトもあるし、これは一体どういうことかと」
「すきなんじゃねーの?」


 リョーマくんが興味なさそうに言って、私の体を押した。


「馬鹿言うな!」


 とりあえず私はリョーマくんを殴った。
 殴られたリョーマくんは、若干態度を改めて、興味の「きょ」の字でも向けようと努力を見せた。


「それは、どんな状況で聞かれたの?」
「え・・・教室で寝てたら、寝込みを襲われそうになったんで、正々堂々勝負しろって言ったのかな」
「なるほどね」


 私の説明になっていない説明に、リョーマくんは力強く頷いた。
 面倒くさくなってきたのかもしれない。
 私が拳を固めて振り上げると、リョーマくんは防御の体をしながら、至って真面目な顔で私を見た。


「つまり、お前は寝込みを襲われ、はげしく動揺し、ヤツの思いがけない言葉にも動揺したんだ」


 リョーマくんは、ぐっと声のトーンを落とした。


「それこそ、思考回路が麻痺するほどに」


 ごくり、と私はつばを飲む。


「そ、それは、どういうこと?」


 愚かな私に、リョーマくんは詳しく解き明かしてくれる。


「お前の頭は『すごい好きだ』と言われた瞬間ストップした。魔王はその後も何かを言ったと考えるべきだな」
「そういえば、そんな気もする」
「状況からして、おそらく魔王はこう言ったんだ。『すごいスキだらけだ』」



 すごい好きだから。 すごいスキだ。
 すごいスキだ「らけだ」。
 !?



「そっかぁ!」


 全ての謎を解き明かされた私は、真実の重さに恥ずかしくなった。


「はずかしい!一度ならず二度までも勘違いを!飢えているのか求めているのか!告白とかそういう甘酸っぱい何かを!」


 畳の上に頭を抱えてごろごろ転がる。
 私の奇怪な行動に、カルピンが怯えて「フギャー!」と猫らしい声を上げた。
 リョーマくんはカルピンを宥めながら「まだまだだね」と鼻でわらった。


「これで、お前にもわかったな。これからどうするべきかが・・・・」







 次の日から私の魔王への対抗意識はますます高まり、それが功を奏したのか、心なしか魔王に元気が無いように見える日々が続いて、おもわずニヤリとしたのだった。












拍手ありがとうございました!logです。

夢主が「魔王」と呼んでいる人が不二先輩だとリョーマくんは知りません。
それに、私の中の不二先輩はこんなに人間らしくありません。