描写する100のお題








001:雪(陸遜)

 天より舞い落ちる白い花。

 何もかも白く奪っていく。

 体力、視界、犠牲の証、勝者の汚れ。

 故に、私は雪を厭う。

 望むのは一時の浄化ではなく、穏やかな未来。



002:さくらの花(

 暖かい風。たなびく枝。ふわりと舞い狂う薄い桃色の花弁。

 惜しみもせずに、沢山の花が枝から離れ蒼天に吸い込まれていく。

 こんな風に、きっと私も貴方を置いて空に帰るのだ。



003:白(陸遜)

 明るい日差しの中、猫のような声を上げ、猫と戯れている貴女を見かける。

 そのあどけない表情が示すのは、世の中の真の姿であるべきだ。

 白く光世界の中で、貴女が笑っていなければ、きっと何も意味はないのだと思った。



004:妹(甘寧)

 わしゃわしゃと頭を撫でる度に、くすぐったそうに笑う。

 物をやると跳ねて喜ぶ。

 稽古をつければ勇ましい笑みを向け、遠くから俺を見つければ嬉しそうに駆けてくる。

 肉親がいればこんな感じなんだろうか、と少しお前がくすぐったい。



005:双子(上司と軍師と部下)

 休憩時間、三人でお茶を飲んでいた。

 寧将軍が、お前らって似てるな、と笑った。

 陸遜は、ご冗談を、と冷ややかに笑った。

 私は、お茶で酔いましたか?と笑った。

 寧将軍が苦笑いして、そっくしじゃねーか、といった。



006:証(陸遜)

 勝利の叫びが聞こえ、銅鑼の音が聞こえた。

 舞い上がる砂埃。空からに乾いているはずの空気に湿り気をもたらす人の死。

 真っ赤に血塗られた手を握り、額に押しつける。

 かすかに伝わるドクドクと言う脈打ちが、現実を伝える。



007:十字架(綾統)

 仲間は守る、敵は斬る。

 そう言い切る男は、俺の親父を殺しながら、のうのうと俺の前にいる。

 あいつの部下に、あいつと全く同じことを言う女がいる。

 敵は斬る、味方は守る、それ以上のことは知りませんよ、と俺と背中合わせに敵と対峙しながら言う。

 鮮血と泥雨の降る中、殺した人をきっちり数え続け、俺は泣き出したいのかわからなくなった。



008:闇(

 敵を殺しても、仲間が死んでも、全てすぐに思い出話にできる。

 私の上司に父親を殺されたあの人は、今でも彼を睨んでいる。

 あいつは真っ直ぐな良い奴だ、と居ないところで笑う上司を見ながら、ぼんやりと陸遜を思った。

 陸遜の父親を殺したのは、私と彼の今の主だと知っているから。



009:黒い炎(陸遜)

 陣に火を放て!と私は伝令をとばす。

 四魂七珀を糧に立ち上る赤い龍。乾いた空気が更に水分を奪われ、唇がピリリと少し痛い。

 代わりに人の脂でベタつく感覚を覚える。

 赤く照らされた私の顔は、貴方にどう映っているのだろうか。

 悪鬼妖物なら何も言うことはない。



010:舞い(夢主)

 神の供物となることで、貴方の未来が保障されるなら、女のこの身も有り難いと思える。








あとがき


 背景描写、とりあえず10題。

 難しいですね・・・。