6.戦う背中
は挑発的な戦い方をする。
本気になれば鬼神の如き働きをする体躯は、大抵の場合、限りなく脱力している。顔には嘲笑いを浮かべ、語尾は伸ばすか上がるかする。
隙だらけの雑魚その物だが、油断させる為の演技ではなく地なのが痛い。実力は雑魚などと比較出来ぬものなのに。
「……ふぅん」
の呟きが目に入り、私は感づかれないように、目線だけを書簡から上げた。
彼女が入室した気配は感じて居たが、放って置いたらこの有様だ。
が自分が持ってきた報告書を広げて読んでいた。
はっきり言って今の彼女の行動は御法度だ。お咎めで済めば良いものである。
だが、私は彼女の性格を知っている。彼女は私の不利になる情報のみを利用する。しかし、それ以外の情報なら、百戦錬磨の拷問官の手に掛かっても決して吐露しない意志の力を持っている。
私をいびる情報が報告書に入っている筈もないし、またここには私しかいない。見て見ぬ振りをしてあげよう。
「…ほぅ」
がまた呟いた。今度はさっきより音量が大きい。
どうやら話し掛けられるのを待っているようだ。
…頭が痛い。
と面識を持ち始めてから、眉間を揉み解すのが癖になってしまった。
この女は、基本的に人の意を察しようと努力しない。
「殿」
「おや、陸義さん。いつからそこに」
「頭に蛆でもわきましたか?ここは僕の執務室ですが」
おやそうでしたかねぇ、などといやらしい答え方をする。
ため息を吐くと、一人前に眉根を寄せる彼女に、なんでもありません、と頭を振る。
「それで、一体なにが言いたいんです」
「私があんたに何か言いたそうに見えるなんて、自意識過剰じゃねぇですか」
「……質問を変えます。なにを見つけました?」
私の質問に珍しくにやりと笑うと、竹簡を投げて寄越した。
「これは…投書ですか?」
「龍退治ですぜ」
にやにやと珍しく嬉しそうに言ってくる。
龍退治?
意味通りに受け取ってもろくな事はないので、内容に目を通す。
「なるほど…確かに龍退治ですね…」
わずかに苦笑いをする。
私が今派遣されているこの村の沼に、龍が現れて困っているのだそうだ。実際に被害が出ている。食われたんだと。
「龍なんて…ね…」
「陸議さんは龍が嫌いなんですかい」
「嫌いとかそういう以前に、龍なんて実際にはいないでしょう」
「…無知蒙昧といってあげた方が親切ですかい」
けっ、とが嫌悪感を露わに舌打ちをする。
龍はいない。龍の存在を信じている者は多いが。
実際に諸葛亮先生が臥龍と呼ばれているのも、そういったことからだ。
しかし、に龍を信じている可愛らしい部分があることなんて知らなかった。
「私の事は置いておいて…興味あるんですか、この投書」
「興味あるないなんてこの際意味がないと思いますがね」
「何故」
「だって龍ですぜ?」
答えになっているようでなってない。
否定したいのかなんなのか、関心があるのが普通とでも思っているのか…。兎に角、がこの投書に非常に関心を持っていると言うのは間違いない。
私は書簡を置いて、固まった体を解した。背骨がバキッと悲鳴を上げた。
立ち上がりながら、書簡を纏める。
「これから少し時間ありますか?」
「あるって言えばあるし、ないって言えばないですな。私ら護衛兵なんて、主の一存で暇が下されやすからねぇ」
「ならば問題ありませんね。これから、この投書を処理しに行きましょう」
私がそう言うと、が「ほ」と息を吐いて、目を丸くした。
「いかれるんですかい?」
「ええ」
「私を誘って?」
「誘わずとも、貴女の役目は私の身辺警護でしょう?」
「それは・・・そうでやすが・・・」
あごをさすりながら、困惑するように彼女は首を傾げた。
今日は珍しい顔を何度も見せる。
私が外套を纏っている間に考えがまとまった様で、彼女は「まあ、いいや」と肩を竦めて、
「陸議さんと龍退治なんてぞっとしやせんが。まあ、我慢してお供しましょうぜ」
「陸遜です。いい加減覚えてください」
痺れを切らしてようやく訂正を入れた私に「おや、そうでしたねぇ」と、彼女がお決まりのように嘯いた。
投書に添付されていた地図に沿って、私とは森の中を一列で歩く。
私が前、が後ろ。
官服姿の私と違い、は正規の軍服を着ておらず、まるで野党の様なその姿に、溜め息だけが吐いて出た。
全く。物見遊山ではないのですが。
の服装に関しても、もう何も言う気が起きなくなった。
有事にはキチンしたなりで出仕はするので、もうそれでいい。多くは望まない。
「陸議さんや、うでたまこ持ってたりしやす?」
後ろからが訳のわからないことを言う。
「うでたまこ…?ゆで卵ですか?」
「揚げ足取りは一人前ですな。質問に質問で返すなと親兄弟に教わらんかったとは、哀れで物も言えなくならあ」
「それは重畳。黙ってもらえるならいくらでも取りましょう。……卵なんて持ってきてませんが」
言い終わるか終わらないの刹那、の手が背後から私の鼻と口を塞ぐ。
そのまま頭部をぎゅっと抱えられる前に、私は屈んで彼女の腕から辛うじて逃れた。
彼女を振り返りながら、ズリズリと下がって間合いを取る。
「なんの真似です」
私が冷静に問うと、は不思議そうに目を丸くして立っていた。
「……おお。間違えた。つい癖で」
白々しい。
「癖で殺されては堪りません」
「癖にしたのは陸議さんですぜ。…ほい、呼吸器官を覆っておくべきだぜ大将」
そう言って手ぬぐいを二つ三つに折り、間に何かを挟んだ其を差し出す。
「なんです」
「おやおや、陸議さんは一人で手拭いも巻けないんですかい」
説明する気はないようだ。
物分かりが悪い、と謂わんばかりに大仰に嘆き、次いでに嫌味を言うのもわすれない。
頭が痛くなるのを感じながら、私はそのままの形で手拭いで鼻と口を覆い、後ろで結びつける。
すぅっとした清涼を誘う臭いが鼻孔を突いた。
が「暗殺者みたいでお似合いですぜ」と、ニヤニヤしながらお座なりな拍手をする。
私は肩を竦めて会話を切った。
「貴方はしないんですか」
「しやせん。嗅覚が塞がれると動きに差し障りやすから。…陸議さんが私以外に殺されたいと思ってるとは悲しいですなあ」
「貴方に殺されたい、なんて考えたことは一度もありません」
は「そうでしょうそうでしょう」と何故か満足気に頷いた。
全く会話が先に進まない。
私は地図に目を戻し、に背を向けて再び歩き出した。
「最悪、アンタが無事ならそれでいい」
風が耳を掠めて、の呟きを運んできた。
彼女にしては、余りにも殊勝過ぎて、私は空耳だと判断した。
のくれた手拭いのせいで鼻が全く効かない。
しかし、なんだか若干大気が湿ってきた感じがする。心なしかモヤが出てきた。
進むに連れて霧が濃くなってくる。
目的の沼につく頃には、辺りはすっかり霧に覆われてしまっていた。視界が悪い。霧が出ているのに何だか暖かいのが不気味だ。
後ろでが、ごぼごぼと咳込んだ。
「ここのようですね…特に異常はないように感じますが…」
精々『沼』というより『池』と言った方が適切だと感じるだけである。
が、またゴホゴホと咳込む。
「?」
振り返ると、は手を降って顔の周りのモヤを払っていた。そして時折、咳き込んでいる。
やはりこの『沼』に何かあるのか。
「陸議さん、この『沼』、どう見えやす?」
「どうと言われましても、特に変わった様子はないですね…この霧が気にかかりますが」
私の返答を聞いて、が口許を拭いながら「チッ」と舌打ちする音が聞こえた。
「チクショウ、やっぱりそうかよ、芸がねぇなあ、っざけんなよ」
ブツブツと虚空を睨みながらが呟く。
その様子に私は違和感を抱く。
おかしい。
は、こんな風に苛立ったりしない。
人を見下すように嫌悪を露にしたりはするが、悪意はきっぱり言いきるのが彼女。
こんな風に、終わりなくブツブツと苛立ちを声にしたりしない。
咳もさることながら、さっきの殊勝なセリフも空耳でなければ、確実に具合が悪いのではないのかと思われる。
私がに声を掛けようとした時、
ぐぉおぉぉおおん!!
突然、鈍い唸り声が辺りに響いた。
「な…っ!」
地面が揺れるようなその音に、『沼』を振り返る。
視界のその先で、水面が見るまに盛り上がって行き、激しい唸り声と盛大な水飛沫を上げてそれは姿を現した。
巨大な龍の鰓。
……否、まるで嘴の様に避けた巨大な倒木。
霧と水飛沫、この唸り声の様な音から勘違いしたのだろう。
おそらく、これが、『龍』の正体。
だとすると、『加害者』は、
ぱしん!
風を切る音に私が気付くのと、がそれを叩き落とすのは同時だった。
彼女は既に剣を抜いて居り、自分に向けられた矢は避け、私に向けられた矢は残らず切って地面に叩きつけていた。
官服だろうと迷わず襲いかかってくるとは。相当腕に覚えのある集団か、あるいは無知かの何れかだ。
反逆行為と言う大義名分が出来たことに、思考の隅で喜んでいる自分がいる。だが今はそんな場合ではない。生きて帰らなければ、名分も価値を失う。
こちらから敵方を見つけるのは容易ではない。相手は霧と林の中にいるのだ。
片やこちら姿は丸見えだろう。龍の被害にあった報告の件数だけ、彼らはこの戦場の経験値がある。
「あれが龍だって?」
私の横で、が低く唸るように言う。
一ヶ所に固まっているのは得策ではない。相手の狙いを分散させるべきだ。
私は離れる合図の為に、の肩を軽く叩いた。
が急いで私を見上げた。瞳が戸惑った様に揺れる。
どうしたんでしょう。気味が悪い。
「あ、ああ…陸議さんか。…いかん、良い感じに回ってきちまったなあ…」
コンコンと刀の柄でこめかみを叩く。
「一体どうしたんです、貴方らしくない」
に若干背を向ける形で周囲を警戒しながら、彼女に問い掛ける。
彼女が働けないなら、私がなんとかするしかない。
いくら殺した方が今後の気持ちが楽だと分かっていても……やはり、見捨てるわけにはいかない。
さあて、とが自嘲気味に呟く。
「無事帰ったら報告するつもりでいやしたが…陸議さんに渡したあれは、中和剤みたいなもんなんすよ」
「中和剤?」
「どんな香りでもそうでやすが…きつすぎる臭いは時に幻覚作用を身体に及ぼしやす」
が手首を軽く振って袖口に忍ばしてある筒の蓋を開け、何かを一粒ガリッと噛んだ。
「エセ幻術士がよくやる手法なんで。『龍』と聞いてなんとなくテキトーに作ってみたんですがよ…役に立ってなによりでやんす」
どうやら気付け薬の類いだったようで、薬の苦々しさが伝わってくるような調子で、心にもないことを彼女は言う。
周囲の気配は、私たちを見たり別に視線を移したりとマチマチだ。
私が官服を着ていることに漸く気づいたのだろうか、困惑が感じ取れる。
「…何故そこまで予測出来ていながら、自分用のを用意して来ないんですか」
そら決まってらあ、とが言う。
小馬鹿にしたようなこともなく、少し笑いを含んだような。
言いながら、空いている手の指を二本立て、私側の指を器用に折り曲げて一本にすると、そのまま彼女は軽く自分の前方を指差した。
「二人して付けて行ったら、本当に幻覚作用があるのかわからないから、ですぜっ」
言い終わるや否、彼女は私の背中を軽く押した。次の瞬間、彼女の気配が遠ざかる。
一拍遅れて、私はと反対の方へ走る。
後ろを向きながらも、彼女の向かった方向が分かるのは、先程の彼女の合図のお陰だ。
背の低い木を飛び越え、二兎追う者たちを正面に見つける。外套の下に備えていた双剣を抜刀しながら、標的に向けて速度を上げる。
久々の白兵戦に少し体が強張ったが、相手が鼻と口を覆っているのもあって動きは速くなく、ほどなく勘を取り戻すことができた。
心に生まれたゆとりの片隅で、ふと私は道を挟んで反対側の林の中で戦っているであろうのことを考えた。
こうして、と肩を並べて同じ土俵で戦うなんて、初めてではないだろうか。
私は、彼女を私の斥候として前に立たせる。
彼女は、私を安息の死から護るために私に背中を見せる。
いつもそうで。そうであることに一片の疑問も抱かなかったけれど。
『最悪、アンタさえ無事ならそれでいい』
『あ、ああ…陸議さんか…』
『二人して付けて行ったら、本当に幻覚作用があるのかわからないから、ですぜっ』
今日のような態度をとられると、私の中の小さな良心が、惜しい、と囁く。日頃の仕打ちを忘れて、簡単に死なすのは惜しい、と囁く。
幾人かを足の筋を切って逃げれないようにし、何人かは気絶させた。私の周囲で、私に襲いかかるものは居なくなる。
それほど戦闘になれた集団でもなかった。だからこその、選ばれた戦場なのだろう。
彼女はどうなったのだろうかと振り返ると、
「……」
声が震えたかもしれない。
背後に、血まみれの女が気配を殺して霧を纏いながら佇んでいたら誰だって一瞬は息を飲むだろう。
特に私の場合、彼女が普段通りなら、殺されていたに違いないから、背筋も共にヒヤリと凍った。
「殺さないんですかい」
抑揚の無い声でぼそぼそと彼女は言った。
まるで死神のように静的に沈むその言葉は、非難も疑問もなにも感じさせないものだったが、何故か遠まわしの皮肉のように聞こえ、逆鱗がざわりと動く。
そんな私に構わず、微動だにしないまま、唇だけをぼそぼそ動かした。
「燃やさないんですかい」
「殺す必要も燃やす必要もありません。私たちは調査に来たのであって、戦を行いに来たのではありません」
普段が悪鬼とするなら、今はまるで幽鬼のようで薄気味悪い。私の方が幻術に囚われているようだ。
振り払うように、突き放すように強めに彼女を諭す。
私の言葉を受けて、はしばし瞠目し、
「じゃあ、なんであんときてめえはあの村を焼き払ったんだよ」
そう静かに言い、それだけで気がすんだのか、くるっと私に背を向けてすたすた歩き出した。
「…ちょっと待ってください」
私は彼女の腕を掴んだ。
利き腕だったせいか、ぬめっとしていて掴みにくく、通常より力を込めた。
が怪訝そうに振り返る。
彼女の私に対する態度の原因を探ろうとしたのは、少し前。
私の一瞬の油断により、の(唯一と言っても過言ではない)友人を死に至らしめた時に、怒りによって彼女が口にした言葉。
『貴様は、今も、今までも、これからも…』
彼女の過去はある程度知っている。
既に、部下になるにあたって、彼女の経歴は調べたからだ。
しかし、彼女の過去と私の過去が交差したことは一度もない。
けれど、彼女は、確実に私の某かの行動によって傷つき、怒り、恨んでいるのだ。
その理由を知ったところで、私が彼女に何かしてやるとか、そういうことは思わない。どんな事実を知ったところで、今更私は『陸遜』を変える気はない。
だから、あれ以来気づくようになったのだが、彼女の口の端に時折上る『陸遜』ではなく『陸議』に対する言葉に気づいても、それを聞き出そうとはしなかった。
語る必要がないから彼女が語らないのだと知っていたから。(恐らく、彼女の語る事実は私にとって毒にならないのだろう)
だが。
「いい加減、私を通して過去と語るのは止めてください」
の瞳が、つい、と細くなる。
やっと現した感情の色にほっとしながら、油断なく彼女の猛禽類のような瞳を見据える。
「過去を語りたいなら、私と話してください。…そういう態度は全く持って鬱陶しい」
彼女は何も答えない。
怒り、不愉快、殺意、死、死、死、の目からは暗い感情しか流れてこない。
…幾ばかりかそうしていただろうか。
へっ、とが鼻で笑った。一度瞬きをすれば、雰囲気もろとも態度がいつも通りのがいた。
「腕掴んで、目を見つめ続けるだけで、恋が成就するなんて思っているとは…陸議さんはまだまだ子供ですなあ」
ケケ、と馬鹿にした笑いを含め、怖気が走ることをが言う。
余りの気持ち悪さに、掴んでいた手を振り払ってしまった。
照れちゃってまあ、とがいやらしくニヤニヤ笑みを浮かべる。
「………貴女がそういう気持ちでいたとは知りませんでした」
「冗談でも、次言ったら殺しますぜ?」
やっと言えた私の皮肉に、が毛を逆立てた猫のように噛みついてきた。
いなす気にもなれず、私は肩を竦めた。変な顔をしているは分かっているのだが、筋肉がいうことを聞いてくれない。
もで、続ける気はなかっようで、鋭利な爪を何事もなかったように引っ込めた。
「あーあー…陸議さんが何も言ってくれなかったからよぅ、こっちはみんな殺しちまったっすよ」
どうしてくれるんだ、と言いたげに己の服の裾を持ち上げて、血に染まった体を見せつける。
知りませんよ、と吐き捨てようとする私の前で、池に向かって歩き始めたが、無造作に服を脱ぎ始めた。
!
「!」
「ひひひ。この異臭の原因には心当たりがありやしてね。地熱で岩の成分が溶かされてる為なんすよ。故に温度が通常の池より高い」
言いながら霧の中のスタスタと進んでいく。
思わず吐いた溜め息はかなり盛大なものだった。こめかみを押さえる。違う意味で顔を覆いたい。
仮にも女性なのだから、無暗に素肌を晒すのは勘弁してもらいたい。目のやり場に困る。
「何をするのか知りませんが、彼らを連行する為に応援を呼んでこなければなりませんから、早く済ませてくださいよ」
「応援呼んでくるのは誰だと思って言ってやがるんですかねぇ?」
霧越しにハッキリ見えるのは黒い頭と空気に触れて黒くなり始めた服だけだが、いつも通りのだらしのない笑みを浮かべいるのは分かった。薬が効いてきたのだろうか。
ならもう心配するに値しない。佩刀はしていないが、利き腕とは逆の手で、剣の鞘を握っている。残党が居たところで死にはしないだろう。彼女の戦闘能力は折り紙つきだ。
私は踵を返して元の場所に戻る。
連れ帰るのが一人か二人になっていたとしてもさして問題ではないのだが、彼らは…一応私が治める『村人』なのだ。
そして、襲われた被害者も『私が治める村人』で。
この、投書を送ってきたのも『私が治める村人』だ。
戦乱の世。已むに已まれぬ事情があったのかもしれない。
のように、人格が崩壊した者も、ある意味時代の犠牲者なのかもしれない。
けれど。
戦乱を言い訳にすれば、理不尽が許されるわけではない。
少なくとも、私は未だ、この戦乱の世以外の世界を知らないのだから。
しばらくして、血を落としに行った(と予想したが)が、服を魚に食い荒らされたと、既に原形を留めていない布を振り回しながら駆けてきた。
どうみても追剥する気満々なので、外套を枝に掛けて、見張りをするよう言って私は道を駆け降りた。
終
あとがき
あっちの国は、温泉とか少ない(火山活動が少ない?)そうなので、ちょっとどうかわからないなーと書き始めた矢先に、四川の方で大地震が起きました。
今はもう落ち着いたのでしょうか、報道などで一切見かけなくなりましたね。(オリンピックでそれどころでないのかな)
『陸遜の龍退治』は、怪しい民間伝承で残っています。そっちは、7つの首(7色だっけ?)の竜を、その地方に派遣されてきた陸遜が剣一本で倒した、という話です。
なんだっけ、陸(遜)瑚みたいな名前が付けられたそうですよ。(かなりうろ覚え)
さんが唯の変な人になってしまいました。次も変な人ですけど、もうちょっとしっかりした変人なはずです。
読んでくださってありがとうございました!